水と月に委ねる72時間〜中居りの集落でゆったり覚ます暮らしの感覚

2017-03-16

report/// 水と月に委ねる72時間〜中居りの集落でゆったり覚ます暮らしの感覚

この企画は、昨年の夏に実施された「TURNSのがっこう<郡上編>」を通じて、東京から郡上八幡を訪れた方々にむけた、《「ディープな」郡上リピート企画》として立ち上がりました。

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大きなテーマは、「水と月」
清い水がながれるいとしろの水をのみ、それでご飯をたいたり、雪の中を歩いたり、新月の中で車座になったりする時間をすごしながら、ゆっくりと身体をやすめられるようなプログラムを意識しました。「女性限定」、そして「2泊4日」というツアーの様子をぜひご覧ください〜:)

■ 2月23日(木)■

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東京の新宿バスタに集合!
参加者3名と、スタッフ2名で乗車。車種はまゆがたの独立席「コクーン」。
女性にうれしい仕掛けに興奮してしばし寝つけませんでした。

■ 2月24日(金)■

翌朝名古屋に到着!
すると石徹白住民の廣中さんがピックアップにきてくれていました!
新幹線で名古屋に到着する参加者もう1名とも無事合流し、
いざ、モーニングへ。

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名古屋モーニングといえば、もちろん「コメダコーヒー」。

こちらで、オリエンテーションを行いました。
今はどんな気持ち?
これからの3日間、なにを大切にして過ごしたいか?
そんな話をしながら緊張もほどけていきました。

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わたしたちが話をしている間に、
廣中さんの息子さんがこんなかわいらしいものプレゼントしてくれました。
この感性と嗅覚すてきすぎる・・・。

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ここから石徹白までは2時間。
車内8人でお話ししたり、ちょっと眠ったりしながら向かいました。

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ついたらそこは雪景色。
宿に荷物をおろし、早速外へ!

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はじめの体験は、絶景パノラマスノーシュー。
旧いとしろシャーロットタウンスキー場の斜面をのぼっていきます。
※私有地ですので許可が必要です。

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「このへんで寝転んで待っとくねー」

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「もっと上までいってくる」

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こちらは、石徹白のおばさんたちから聞いた昔遊び「肥料袋でそり滑り」。

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頭からダイビング〜!

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今回みんなは「自由の意思と責任で集まってる」んだと朝共有したからなのか、みなさんのびのびと過ごされていました〜

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帰ったらお昼ご飯〜!テーマは「いとしろの発酵食と山めし」。
こちらは、生のお肉を白菜と一緒に発酵させた「肉漬け」。

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炒めた「にしんずし」も「引きずり鍋」も、食べきりました〜!おいしかった。

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お腹が満たされたあとは、白山中居神社にご挨拶を。

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正式参拝で、全員玉串も奉納させていただきました。
「神社でお願いごとをしたらだめというところもあるが、私はそうは思わない。
お願いごとをすることは、それに向けて精一杯行動するとして自分で責任をもつこと。」
そんな禰宜さんの言葉が印象的だったという参加者も多数おられました。

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神前に供えたお神酒をいただき「神人同食(しんじんどうしょく)」をすることで
より恵みをいただこうという意味合いのある「直会(なおらい)」の場面。
白山信仰や、ここでの暮らしなどいろんな話しを伺いました。

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帰り道、川辺や、上在所を歩いたのがとても心地よかったです。

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次に向かったのは、「いとしろのばあちゃん家」。
いとしろでお馴染みの「身欠きにしん」をつかった昆布巻きを教えてもらいました。

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「ここでの暮らしはどうですか?」
雪国の暮らし、豊かな水のある暮らしからはじまり、
おばあちゃんの幼少期のはなしまで、いろいろ広がりました。
この頃に、地元参加者の2名とも合流〜。

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日が沈んできて、みんなで帰宅。ご飯準備のお手伝い。

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「今回の3日間のキーワードは「浄化」ときいていたので、
できるかぎり無添加の材料や調味料をつかうことを意識してつくりました〜」
もちろん、これから毎回のお米はいとしろの清水をつかって炊きます!

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こちらは大豆とヒヨコ豆のハンバーグ。
おいしくて、お腹いっぱいになっても、どんどん食べてしまう。

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夜の交流会では、地元のおじさんたちにお越しいただきました。
お酒ものみながらいとしろの歴史文化など、ざっくばらんにお話しを。
石徹白でとれる「薬草」のお話しも盛り上がってましたよ。

パラパラと、お布団に向かう人がでてきた中で
「絵を描きたくなった」というつぶやきから
次の日以降に行う「表現アート」をすこしかじらせてもらいました。

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1日まるまる一緒にすごした5人の今の気持ちはこう表現されました。
これにて1日目は終了〜。いや、結構すでにボリューミーですね。

■ 2月25日(土)■

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朝はボディーワークからスタート。
地元参加者の梁さんが「フェルデンクライスメソッド」という、体の動きをとおして私たちの能力を引き出すトレーニングを行う講師をされているので、彼女の指示に倣ってそれぞれが身体の様子を感じ、観察する時間を持ちました。
「前後で息の深さがまったく変わりました」「はじめて床を意識した気がします」と、終わったあとに梁さんに寄っていく姿が印象的でした。

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ゆっくりと身体を覚ましたあとは、朝ごはんの準備。

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「いただきます。」古代米のお赤飯と、湯豆腐。沁みる。

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食後一息ついて、みんなで輪に。
昨日から「この3日間で大切にしたいこと」がたくさん出ましたが、
その中で「今日とくに、自分で意識したいこと」を問いかけてから、
2日目がはじまりました。

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2日目の体験は、「かびづくり」。今日も、別のおばあちゃんのお家に訪問しました。
かびはかびでも「カビ」ではなく「蚊火」。

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昔夏に田畑ではたらくときに蚊やブヨをよせまいと、着物の帯にたらした藁細工。
本来は、ヒエやアワを乾燥させたものを芯にして、それをぐるぐる藁でまき、先端に火をつけ燻して使っていたそうです。1日1本使うので、「冬の間に200本はつくったなあ〜」とおばあさん。ヒエやアワがないときは、今回のように「木綿」をつかって作るといいそうです。

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最後は縄ないの技術も必要。「なんかコツつかんだ気がする」「わたし向いてないわ(笑)」などそれぞれの得意不得意が見え隠れする時間。相互にコツを伝えあいながら、20本近くできあがりました!「これは、当時と一緒、「結」じゃね。」

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そんな中、楽しそうな表情を浮かべてなにか違うものを作り始めるおばあちゃん。なにかわかりますか?

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「お馬さん。これは手仕事ではなくて、ただの藁遊び。冬仕事してるときにねぇ、近くに子どもがいたら教えてあげるんですよ。そしたらしばらく静かにしてこれつくってくれます(笑)」。かつて何人もの女性たちで1つの家にあつまり、子どもたちも同じ場で「仕事」をしていた様子が容易に想像できました。回想し、微笑みながら手を動かすおばあちゃんの表情から、今の仕事場では得難くなった豊かさを感じた時間でもありました。

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実はこの家は、とってもめずらしい建築様式をしています。「神に仕える人が住まう里」として栄えた石徹白の中の「上在所」という部落特有のつくり。家の2階に「御神前の間」と「御霊様の間」という2つのお部屋があります。ここに住むおばあちゃんは、毎朝欠かさずここに参り手を合わしているのです。

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わたしたちも手を合わさせていただきました。

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「もう何年ぶりになるかいな。久しぶりにわたしも参らせてもらうわ。」かびづくりの先生としてきていただいたおばあちゃんも、腰を曲げながら2Fにこられました。

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「では、そろそろおいたまします〜!」と合図したら、「あなたたち、甘酒を飲まんかよ。」と。

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「いい具合にできたで、帰ってみんなで飲みなれ。」

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「古漬けも焼いて食べたらうまいで。」と。
予想外のお土産片手に、有り難さいっぱいの中みんなで帰宿しました。

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恒例になってきた、ごはん準備風景。

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見るからにおいしそう。刺身コンニャク。

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今回は、「いとしろの清水を使って」さらに「囲炉裏で炊いた」お米です!
「いただきます。」

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お野菜たっぷり。お豆腐ときのこの和え物や、クルマ麩。

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そば団子のお吸い物など・・・。「これらを食べにくるだけで企画が成り立つ」と参加者の想像を一気に超えてくるお料理の数々。ごちそうさまでした〜。

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ごはんのあとは、「サイレント」な時間。誰とも話さない静かな一時間を過ごしました。

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畳に寝転がってもよし。

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雪に冷やされた空気をすいにいくのもよし。

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あっという間の1時間でした。

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みんなそろって、それぞれの今の気持ちを聴きあいました。でてきたシンプルで軽快な言葉の数々に、部屋の中にいながら新鮮な空気をいただいた気分でした。

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そんな雰囲気の中、「言葉にならない自分の気持ちや感覚」をうつす「表現アート①」の時間に入っていきました。

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テーマは2つ。「最近不安や気がかりに思うことは?」そして、「これからの未来の理想状態は??」

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利き手と逆の手で、「3分」という限られた時間に、クレヨンやクレパスに手を伸ばし思い思いに描いていく時間。書き終わってからあらためてその絵をみて、自分で解釈。数人で集まって、その絵がどのようにみえるのかをやりとりしました。

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途中、おやつが運ばれてきました。玄米のお餅。みなさんぺろり。

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一通りみんなのをききおえたところで、また円座に。次は、たくさんの雑誌を並べました。ここからは「表現アート②」。

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まずは、理想とする未来について、マインド、からだ、人間関係、仕事、ライフスタイルなど、いろいろな切り口から理想の状況について書き出しました。イメージできたあとは、つい先ほど描き、聴き合った「これからの未来の理想状態は?」をイメージしながら雑誌をめぐり、直感でピン!ときたものをざくざくとくり抜いていくというもの。

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黙々と、数十の雑誌をめくり、きり、めくり、きり。途中笑い声がきこえたり、感嘆があがったりもする雰囲気でした。「これこれー!」というものがみつかったのか、集中している中で拍子抜けするようなおもしろい写真があったのか。流し読みも流し読み。しかし、こうみると雑誌は感覚の宝庫だなあと、新しい側面を垣間見れた気がします。もちろん、この企画立ち上げをサポートしてくれているTURNSさんからも、雑誌をご提供いただきました!ありがとうございます。

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「表現アート②」は明日も連続して行うので、きりの良いところで切り上げ。さあ、もうごはんの時間。

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今日はなんと、モロッコ料理!こちらはタジン鍋。手前は世界最小のパスタ・クスクス、ポテトとお豆がたっぷりはいった揚げ春巻き「ブリワット」。他にもサラダなどあったのですが、食べることに夢中で写真をとっていなかった模様。失敬。ここの宿の方が、以前モロッコのゲストハウスで働いていたこともあって、このお料理が実現しました。奥美濃の山里でモロッコ料理というのも、粋。「浄化しにきたんだけれど、毎食お腹は膨れっぱなし。」とみんなで笑いながら、完食。

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2日目の夜にして、最後の夜。この晩は「月待講」をおこなうことに。
これは、江戸時代に日本中どこでも盛んに行われていた講の1つで、月の出を待ちながら、人々が飲食を共にしつつ語り合うもの。翌日は、人の心も身体もゆるまる「新月」を迎えるということで、話したいことをそれぞれのペースではなせる時間になればなと思いました。「月待講」を始めるまえに、身体を夜の暗さと冷たい空気にさらしにいきました。

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そこで参加者の方々が発見したのが「雪の結晶」。「29年間生きてきてはじめて結晶みた!!」など興奮して雪の壁から頭を上げない皆々様、こぞって8名ほど。そういえば、私もそんな落ち着いて雪をみてなかったなと、宝の持ち腐れをしてたなと改心。いとしろの人たちが通りかかったら、さぞかし不気味な光景だったことでしょう。

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「月待講」がはじまりました。
このときには、いとしろ在住の参加者もさらに加わり、いつもより大きな円に。
ぽつり、ぽつりと、話したい人が話す、そんな雰囲気に親密度があがったような気がします。
おばあちゃんにいただいた甘酒も、「月待講」を伝えてくださった方からの差し入れも、
この場に、人に溶け込んでいました。何が話されたかは、それぞれの胸の内に。

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中締め後も続いた月待講もついにお開きに。終わってから今日の昼につくった「蚊火」を燻してみました、の写真。

これにて2日目は終了。おやすみなさい。

■ 2月26日(日)■

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朝目覚めると、雪がぱふっと積もってました。朝焼けがなんともきれいで、外にでて身体を伸ばすのがとても気持ちがよい・・・。

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今日の朝ごはんは、とっても特別なのです。

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この「お粥」。「ひえぬか」というひえを精白したときにでる皮が入っているのです。「昔はお粥にひえぬかをいれとったんじゃ。あれがあるとなあ、沸騰してぷくぷくってなったころに、脂がじわぁ〜っとしみてうもうなるんや。もう、今はどこでも手に入らんけどな。」そういとしろのおばあちゃんに話をきいてからそのお粥を食べたくて探しました。郡上八幡の庄村米穀店で、「倉庫に残ってた最後の一袋や、もうない。」といって、わけていただいた貴重なひえぬかを使ったら一品でした。

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雑穀の香ばしい香りのするお粥に、お漬物、塩昆布、お手製のなめたけに、お吸い物。
すばらしい朝でした。

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今日はさっそく、昨日の続き。雑誌の切り抜き作業を継続したい人は続け、あとの人は今一度「これからの未来の理想状態は?」をイメージしながら切り抜いたものたちを画用紙に貼っていきます。

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こんなふうに。それぞれに味がでるのが、貼り始めてすぐにわかります。
サイレントじゃないのに、みなさん真剣そのもので静かでした。

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2時間ほどたち、みんなでできあがったものを持ち寄りました。
ここから、ひとりひとりがこの「表現されたもの」についてはなし、
まわりの人は聴き、最後に付箋にコメントをかいて受け渡しします。

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今の暮らし、これからの暮らし、
自分や社会の、これまでの在り方、これからの在り方、
好きなこと、感動したこと、大切にしたいこと・・・
そういうことが語られた場の様子です。
あのときわたしが感じた「ハツラツ」さが伝わるでしょうか〜??

しっくりくること、意外だったこと、新しい発見、おもしろいつっこみ・・・
ひとりひとりに対して、それぞれの視点からコメントされることで
画用紙一枚以上に大きく、分厚く、そして熱を帯びるのを感じました。

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ついに、この時が来ました。「最後のごはん」。
 
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ネパールの家庭料理、「ダルバート」です。
自然栽培の青大豆やレンズ豆を、炒めた玉ねぎとともにふかした豆のカレー。大根や人参のお漬物や、スパイスを添えた定食です。ラッシーも。「これを食べにまた来ます」といわれるほど、やさしく調理されたごはんでした。

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ごはんも終わり、身支度もおわり、そろそろ解散。

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なごり雪とともに帰路へ。

といいましたが、実はまだ続きが。
郡上八幡にもよりました。
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昨年の「TURNSのがっこう<郡上編>」で出会った方々と再会をしました。

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この日にちょうど開所した「HUB GUJO」にも立ち寄り。

これにてすべての行程が終了。
地元参加の方とお別れをして、名古屋に向かい、無事全員ご帰宅されました。

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ありがとうございました!!

この2泊4日で印象にのこる言葉にたくさん出会えました。
その中でもうれしかったのは
「東京での暮らしをそんなに否定しなくていいんだなって思えました。」という言葉。
いとしろに暮らしていてわたしはここがとても好きだけれど、
移住の波にのって今いるところを離れることがいいとは思わない。
今いる場所だからできること、つながれている人やものへ心を通わせ、
毎日生き生きといきていける人が増えたらなあと願っています。

この記事もだいぶん長編作になってしまいました。
最後に。
振り返ってみれば「ゆっくり」といいながら、相当詰め込んでしまったので
今度はもっとゆるゆる、のびのびと過ごせる企画をつくろう〜と思っています。
興味のある方はぜひ、ご一緒しましょう。(近藤)